英語の発音と日本語の発音の違い

■日本語ネイティブは英語の音を聞き取れない?

日本語ネイティブが英語の発音(リスニングとスピーキング)を身につけることは、文法を身につける以上の壁になっているようです。
中には、「英語の音の周波数は日本人には聞き取れないから、私の開発したCDを聞きなさい」、みたいなトンデモな教材もあったりします。
実際聞き取れてる人が大勢いるのになんでこのような主張が通用するのか不思議です。
ただ、日本人が英語の聞き取りや発音が苦手なのは確かです。
これは、日本語の音の体系と英語の音の体系が多くの点で異なっているのが原因だと考えられます。
単純に日本語にない音が英語にあるということだけではなく、その他の音の捉え方やリズム等ことごとく異なっています。
過去記事で、英語の語順は名詞の前置修飾以外は全て日本語と違う、という話を書きました。
発音についても、非常に多くの面で日本語と英語は違っています。
そのため、単に、日本語にない音を憶えるだけでは、聞き取ったり、通じるような発音をしたりすることはできません。
どのような点で英語の音と日本語の音が違うのかをきちんと把握したうえでその全てを練習する必要があります。
以下、①音の種類、②音の単位、③話すときの調子の3つに分けて、それぞれについてどのように違うのかを説明し、何を意識して身につければよいのかを考えていきたいと思います。

■①音の種類について

日本語の母音は、「ア」「イ」「ウ」「エ」「オ」の5種類です。これは英語の母音が11種類、二重母音を含めると16種類ある(アメリカ口語教本の分類による)のと比べるとたいへん少ないです。
子音についても英語の方が種類が多いです。
音の種類が少ない言語を母語とする人が、音の種類が多い外国語を身につけようとするほうが、その逆の場合よりも当然苦労が多いです。
しかし文句を言っても何も変わらないので、まずは、どんな音があるのかをリストを作ってきっちり覚えてしまいましょう。
英語の音がいくつあるのかについては、いろいろな分類がありますが、どれでもいいのでひとつの分類の仕方を選んで、それを使うのがいいと思います。
私は、アメリカ口語教本の分類を使っています。(中級以外も同じ記号表が載っています)
これは、母音11種類(脚注のように考えれば10種類)、二重母音5種類、子音24種類の40(39)種類に分類されているものです。
他の分類と比べて種類が少ないので早く憶えられます。私はこれを使って音の種類を整理しています。
そして、音のリストを憶えたら、全ての音がきっちり区別できるように、自分なりのポイントを見つけていきます。
ここで大事なのは、聴くときも話すときも「区別できる」ようにすることです。「正しい一つの音」は何かを追求することではありません。
rとlで言えば、rとlが聞き分けられ、rをr、lをlと聞き取ってもらえることです。
実際、音には幅があります。これが正しいという1種類の音があるわけではありません。
例えば、「ハエ(蠅)」「イエ(家)」のそれぞれのエは実際はかなり違う音です。前者はアに近いエですし、後者はイに近いエです。言語によってはこの二つのエの音は別の音として扱われます。しかし日本語では、同じ「エ」のつもりで発音し、聞く側も同じ「エ」だと思って聴いています。
この2つの場合を、アやイに寄らないニュートラルな「エ」の発音をしようとするのはややぎこちなく感じます。
この点で、口の形をきっちり固めることからはじめることは、実践的ではないと思います。
口の形や舌の位置をシンプルに説明してくれる本や教材で憶えるのがよいと思います。
そのような本を、後のおススメの書籍で紹介しています。
以下、私が個人的にしている音の区別の仕方を2つほど紹介したいと思います。

(1)rとl

まず、rの音は口の中(上あごと下あごの間)に空間を作って、そこで響かせる音です。
やや口を開いて「アー」と言ってみてください。「アー」と言いながら、舌を直角に折り曲げて立てます。
そうすると、口の中で響くような、あるいはこもったような音に変わるのがわかると思います。
このこもったような音がrの音です。(同じような音が出せれば口の形が違ってもかまいません。舌の根元の方を持ち上げるやり方もあります。)
これに対して、lの音は、舌の先を上の前歯の裏側につけて、これを離すときに出る音です。rの音が音を続けて出せるのに対して、lの音は舌が離れる瞬間に出る音なので続けることができません。
このとき注意すべきなのが、口の中に空間を作ってしまうと、rのような音が出てしまうので、そうならないようにすることです。
そのためには、下あごを下げずに口の中の空間を平らにしてしまう、あるいは、舌を細長くして歯の裏につけることによって、舌の左右から空気が抜けるようにしてこもらないようにすればよいです。

(2)sとshとth

sの音は口を左右に拡げて、上下の歯の間から満遍なく息を出す音です。イメージとしては、ふすまや障子を開け閉めするときの「スーッ」という音です。
shの音は、やや口をすぼめるか、あるいはアヒル口のようにして前歯の間から息を吹きだす音です。sの音が満遍なく歯の間から息を出すのに対して、shの音は前歯に一点集中して出す感じです。イメージとしては、ヤカンの口から沸騰した蒸気が吹き出す「シューッ」という音です。
thの音は舌を上の歯に充てて、舌を引きながら歯と舌の間から息を押し出す音です。イメージとしては、サンドペーパーを擦るときのザラザラ感のある音です。

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■②音の単位について(音素、音節(シラブル))

日本語ネイティブは、「子音には必ず後ろに母音をつける癖」があります。この癖をなくさないと、本来の語よりも音節が増えてしまい、全く通じなくなります。
日本語では子音が単独で発音されるのは「ん」くらいですから、そのような癖が身についてしまうのも致し方ないことです。
もっとも、よくよく観察してみると、日本人は、子音の後ろに母音を付けているというよりも、一つの音として、子音と母音を同時に発音している感覚で発音しているようです。
例えば、「か」の発音は、k→aと発音するのではなく、kと発音した瞬間にaと言っている感じです。
私が小学生のころ、学校の先生から、「か」の音は、「カ行の口の形をして「あ」と言う」のだと説明されたことがありますが、その説明に表れているようにそもそも日本人には子音を独立して発音している感覚はないのではないかと思います。
日本人にとっては、ひらがな(カタカナ)の表す音が最小単位であって、「か」は一つの音なのです。kとaの2つの音(音素)で出来ているとは感じていません。
そのため、この感覚を英語の発音に持ち込んでしまうと、子音の発音が極端に短くなってしまいます。短くなると聞き手の方も子音の区別がしにくくなってしまいます。
例えば、th の音は、ある程度の長さがないと音のザラザラ感が出ません。th を短く一瞬で発音してしまうと、t の音に聞こえてしまいます。
日本人にとっては、英語の子音は長めにゆっくりと発音する意識があったほうがよいようです。

■③話すときの調子について

話すときのリズムや高低についても日本語と英語では大きく異なっています。
下の図のように、英語では音に強弱(長短)があるのに対して、日本語ではありません。
また、英語では音を切らずに流れるように続けて発音するのに対して、日本語では一音一音をクリアに発音します。

(1)音の強弱(長短)について

まず、強弱(長短)がある点ですが、これは英語が基本的に分かりきっていることでも、一応言葉にする言語であることに起因していると考えられます。
例えば、I’m glad to see you.というとき、I や you は文脈からあえて言わなくても分かることです。でも、省略すると語順が崩れてしまうので、語順が文の意味に決定的に関わる英語においては省略しないのです。
かわりに、そのようなあえて言わなくてもわかるところは、弱く発音するわけです。
これに対して、日本語は、言わなくても分かることは、言わずに省略します。
上の例でいえば、「お会いできてうれしいです。」とだけ言います。
このように、英語と日本語には、わかりきったことを、「言うけど弱く言う」、か、「そもそも言わない」、かの違いがあります。
このような違いがあるために、日本語ネイティブは、英語でも、言うことは全部はっきりと発音しようとし、聴くときも全部はっきりと聞き取ろうとする傾向が出てきてしまいます。
弱く発音するところは、そもそも重要ではないから弱く発音しているのであり、聞き取れなくても神経質にならなくてよいと思います。日本語では、言葉にされてなくても意味がとれているのですから、英語でも聞き取れなくても意味はとれるし、聞き取れなくてもかまわない、くらいに考えておくのがよいのではないでしょうか。

(2)音を切らずに続けて言う点について

次に、英語では音を切らずに流れるように続けて言うという点について見ていきたいと思います。
この点については、一つはリエゾンやリンキングとしてよく言われる語と語のつなぎを滑らかにつなぐ言い方です。
また、語と語の間だけでなく、語の内部の音も切らずに滑らかにつないで発音します。
さらに、そんなに長くなければ、一文を一息で区切らずに言ってしまいます。
YouTube等でネイティブの話すのを聴いていると、「よくこんなに息が続くなあ」というくらい(日本人からすれば)息継ぎせずに話しています。日本語で同じようなしゃべり方をすると、「もっと落ち着いてしゃべりなさい」と言われてしまうようなしゃべり方です。日本語と異なり、英語は息をたくさん吐いて話す言語なので、意識して息を大きく吸ってから話し始めないと息切れしてしまい、続けてしゃべることができません。
この音を続けて切らずに話すという話し方が身につけば、英語の音声変化についても楽に対応することができます。
日本語でもそうですが、音声変化が起こる場合は、そのように発音するのが楽だからです。英語の場合は、弱く発音するところで特に音声変化が起こります。
日本語でも「NHK」の発音では(日本語?)、「えねーちけー」あるいは「えねいちけい」と発音している人がほとんどです。「えぬえいちけい」と発音していたのを「えねーちけー」に意識的に変えましたという人はほとんどいないんじゃないでしょうか。いつのまにかそのように言うようになっていたのではないでしょうか。
同じように、楽に話そうとすれば、リダクションやフラップTの音声変化とかも、規則をいちいち憶えなくても自然に身についていくと思います。
ここで大切なのが、あくまでも「英語的な調子で」楽に話そうとすれば、ということです。
water は wader のように音声変化します(フラップT)が、日本語的発音で「ウォーター」と「ウォーダー」を比べてもどこが楽になっているのかわかりません。
これを英語的に続けて発音しようとすると、water だと t
のところで一旦声帯を止めなくてはならないのを wader だとずっと声を出したままで発音をつなげられ楽に発音できるのが分かると思います。

■まとめ

以上のように、日本語の発音と英語の発音は単に音の種類だけでなく、多くの点で異なっています。
違うところをきっちりとおさえた上で、そこに日本語のやり方を持ち込まないようにすれば、後は慣れていくだけだと思います。

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