ここまでの話を一旦整理したいと思います。
大人になってからでも、やり方次第でネイティブのような感覚で英語使えるようになる可能性がある、ことを前提に、
ネイティブが英語を話すときは、語順や機能語を自動的無意識的に処理している
ことから、
語順や機能語を無意識的に処理できるように練習すればよいのではないか。
しかし、多くの日本人英語学習者が機能語の意味や語順について理解したうえで、多くの英語の文章を読んだり聞いたりしているのに、ほとんどの人が自動化、無意識化に至っていない。
これはどうしてだろう?という話でした。
■英語ネイティブのこどもはどのように英語を身につけるのか?
英語ネイティブの子どもは、多くの英語のサンプルにふれることで、自然に語順や機能語の処理を自動化することができています。
日本人の大人が大量の英語に触れても処理を自動化できないのはなぜでしょうか。
英語ネイティブのこどもと日本人の大人の一番大きな違いは
頭の中が空っぽかそれとも日本語を身につけているか
という点でしょう。
それは、頭の柔軟性とかの能力的な違いよりも大きく関わっているとわたしは考えます。
■日本語という阻害要因
頭にすでに日本語があるということは、おおきく2つの面で外国語習得の阻害要因になると考えられます。
一つ目は、
英語を日本語に訳して理解しようとし、日本語を英語に訳して話そうとするやり方(英文和訳・和文英訳)をとろうとする点
です。
これは、日本人に限らず、母語を身につけた人が外国語を習得しようとするときは多くの人がとる行動です。
もうひとつは、
日本語を母語としてすでに身につけていることが、英語を英語のまま理解しようとしたり話そうとしたりすることを妨げる点
です。
つまり、英文和訳や和文英訳をしようとせず、「英語のまま」をめざそうとしても、日本語がそれを邪魔します。
さらに、
日本語以外の自動化・無意識化を阻害する要因(主に学習方法について)について順に述べていきたいと思います。
■①英文和訳・和文英訳の弊害について
日本語を介して英語を理解したり話したりすることが、ネイティブのように英語を操る阻害要因となることは、もはや常識といっていいでしょう。
日→英、英→日の置き換えが、「そもそも可能なのか」という問題がありますし、「置き換えている時間」のせいでネイティブのスピードについていけなくなるという問題もあります。
■学校における英語教育での英文和訳
日本語を介して英語を理解しようとするやり方の中でも、英単語をいわゆる日本語の「訳語」におきかえて、それを並べ替えるという機械的なやり方が学校教育では長年行われてきました。
例えば、
She goes to school.
という英文だと、
She→彼女
goes→行く
to→~へ
school→学校
という訳語に置き換え、これを並べ替えて
彼女は学校へ行く
とするやり方です。
このやり方のいいところは、とりあえずそれなりの意味の通る日本語になるということと授業で教えやすいということがあるのでしょう。
だから、学校教育で長年採用されてきたのでしょう。
しかし、上の日本語訳をみると、とても訳せているとは言えません。
まず、どんな場面をあらわしているのかよくわかりません。
彼女が学校に「今向かって行っている」状況なのか、これから「行こうとしている」のか、それとも、「普段行っている」という意味なのか、どれともとれるような訳文です。
実際日常でこんな日本語を使う場面が思い浮かびません。
これは完全に誤訳と言えるレベルですが、それでも学校教育では〇がもらえます。
あえて訳すとすれば、
goesが現在単純形の動作動詞であることから、習慣あるいは繰り返される動作を指すので、「通(かよ)っている」とすべきでしょう。
さらに、school が無冠詞であることから、この場合の学校は具体的な施設を指すのではなく、教育機関としての学校を意味するので、「生徒として授業を受けるために」通っている、ということになるでしょう。
とすれば、このような場合、日本語では、
「彼女は学生です。」あるいは「彼女は生徒です」
というのが普通ではないのでしょうか。
また、She→彼女 と訳せばよしとするのも少し問題です。
She=the woman
ですから、「話し手と聞き手が共に特定できる女性」を指します。
つまり英語の聞き手は ”She” と聞くと反射的にそれが誰をさすのかを自分がわかる範囲の女性から特定しようとするのです。
それを彼女と訳してそれでよしとするのでは英語の意味をとっていることにはなりません。
■まとめ
このように、英語を日本語に訳す、あるいは、日本語を英語に訳すというやり方では、「正確さ」でも問題があるし、「速さ」でも大きなハンディキャップになるし、「楽に」という点ではいちいち和訳、英訳をしていては不可能ということになるでしょう。
次回は、二点目の阻害要因である、日本語が「英語のままで」を邪魔する点について書いていきます。