動詞の後に来る動名詞とto不定詞の使い分け方

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■動名詞とto不定詞

動名詞とto不定詞の使い分けについては、「~こと」の意味で単独で使われる場合も問題になりますが、この記事では、動詞の後に来る場合について、その使い分けの基準について書いていきたいと思います。

■ネイティブの発想から考える。

ネイティブがその母語を話すとき、
「思いついたこと(イメージ)をそのまま言おうとすると言葉になる。」
という感覚でしゃべっています。
それは日本語でも英語でも同じであり、文法を考えたり、場合分けをしてみたりという作業は、複雑なことを言う場合や慎重に言葉を選ぼうとする場合などを除いてはしていません。
ということは、英語ネイティブには動名詞のイメージとto不定詞のイメージがあり、そのイメージに反射的に動名詞とto不定詞を対応させていることになります。
では、動名詞、to不定詞はどのようにイメージされているのでしょうか。
以下では、説明の便宜上、前の動詞を動詞①、動名詞・to不定詞の方の動詞を動詞②として説明します。
つまり、動詞①+動詞②ing 、動詞①+to動詞② ということです。

■それぞれのイメージ

●動詞①+動詞②ing のイメージ

動詞①+動詞②ing の場合、動詞①と動詞②の間には他の語句は何もありません。
このように二つの語句の間に前置詞がなく(この場合、「ゼロ前置詞(無前置詞)がある」という言い方もできます)単に並べている場合には、両者の間には、
be または have
の関係があります。(この点については下の関連記事を参照してください。)
この be と have はイメージ的にすごくよく似ています。
すなわち、
「重なり合い」
のイメージです。次の図を参考にしてください。

X be Y と X have Y のイメージ的な差は、XとYの主従関係のみです。そのため、主従の差がなくなってくると両者の差はなくなってきて、あまり区別ができなくなります。
このようなイメージ的な重なり合いの関係を、「be/have関係」と呼ぶことにします。
とすると、動詞①+動詞②ing の場合は、動詞①と動詞②の間に重なり合いのイメージ=「be/have関係」があることになります。
具体的にどんなイメージになるかは、動詞①+to動詞② の場合のイメージの説明の後に両者を比較しながら説明します。

●動詞①+to動詞② のイメージ

この場合の to は前置詞ではありませんが、前置詞toのイメージと同じように考えることができます。
to はよく「到達」のイメージだと言われることがありますが、正確には、目の前に面と向かっているイメージです。日本語で「到達」というと、目的物、目的地にタッチするイメージですが、to では 対象には接していません。
過去記事にも書きましたが、「ルビンの壺」のイメージです。
face to face の to がまさにそれです。
P to Q のイメージは下の図のような感じです。PとQは面と向かっていて近いところにいるけれども、接していないというイメージです。

このことから、動詞①+to動詞② の場合は、動詞①と動詞②は重なり合っておらず、「離れている」イメージになります。

■両者の比較

●I like playing tennis.

まずは、

I like playing tennis.

I like to play tennis.

のイメージの違いを見てみましょう。
ここでlike と play の関係がいまいちイメージできないという場合は、like の主語である I と play の関係と捉えればいいです。

playing の場合は、いつもテニスをしている、いつもテニスのことを考えているなど、like(I) と playing が とても近い関係、まさに重なり合っているイメージを表しています。
これに対して、to play の場合は、テニスが趣味なんだけどしばらくできていない、とか、テニスをやったことないけどやってみたいとか、テニスと少し離れているイメージを表しています。

●remember

次に、

(ア)I remember writing to her

(イ)Remember to write to her.

について比較してみましょう。
まず、(ア)については、I が writing しているイメージをhaveしている状態、すなわち、I と writing が重なり合っているイメージがあります。
これに対して、(イ)では、ずっと期限を rememberしていて、その期限より前に write する状況、つまり、(remember→書こうと思う→write )といったように、remember と write は重なり合っておらず、時間的に離れているイメージです。

●stop

(ウ)He stopped smoking.

(エ)He stopped to smoke.

ではどうでしょうか。
(ウ)では、He と smoking が 重なっていた状態(He was smoking)にあったものをstopしており、He と smoking の重なり合いのイメージが前提となっています。
これに対して、(エ)では、まず stop(立ち止まり) して、(たばこを取り出して火をつけてから)smoke する状況を表しており、stop と smoke は時間的に離れたイメージです。

●decide , avoid

ここまでは、動詞①+動詞②ing と 動詞①+to動詞② の両方ともが成り立つが表している状況が違う場合について考えてきました。
ここからは、片方しか成り立たない場合にどうしてそのようになるのかを見ていきましょう。

(オ)I decided to move.

この場合、I decided moving と言うことはできません。
(オ)が表している状況は、decide して、その後 move することになるというものだからです。
ここで、「decide は、「~を決心する、決定する」という意味だから、I は心の中に move のイメージを持っており、重なり合いのイメージじゃないの?」と思われたかも知れません。
しかしこれは、日本語の訳語の「~を決心する」に引きずられたイメージです。
decide の意味は、イメージ的には「切り離す」です。
つまり、decide は、今まで議論していたり、悩んでいたりした状態から切り離すということなのです。
そのため、moving を使うと moving を切り離すというよくわからないイメージになってしまいます。

(カ)Avoid using infomal language.

この場合、Avoid to use ~ とは言えません。
もっとも、「avoid は using を避けるのだから、イメージの重なり合いがないんじゃないの?」と思われるかも知れません。
しかしこれも、「避ける」という訳語からきたズレたイメージです。
avoid の意味は、その語源からすると、「空(から)にする」ということです。つまり、よけるのではなくて、対象を取り除くことによって結果発生を避けるのです。
イメージ的には、using をガシッと掴んで取り除く感じでしょうか。このガシッと掴んだ状態が have の 重なり合いのイメージになります。

■まとめ

以上のように、動詞の後に動名詞とto不定詞のどちらがくるか、というときの判断は、動詞①(またはその主語)と動詞②のイメージが重なり合っているか、離れているか、で使い分けるということでした。
このように、イメージの重なり合いの有無で見るというのは、英語が、状況を「俯瞰的に見る」言語であるということを前提としています。
そのため、「当事者の視点で見る」言語である日本語の訳語で動詞のイメージをすると、違ったイメージになってしまうおそれが多分にあります。
なるべく英英辞書で動詞のイメージを身につけるのがよいのではないでしょうか。英和辞典を使う場合でも、訳語ではなくて、どのような動作・状態を表す動詞であるのかをちゃんと説明してあるものであればかまわないと思います。

■参考文献

英語と日本語の違いを、その言語がどの視点(立ち位置)から見ているかということから説明することについて、以下の書籍は非常に勉強になりました。


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