■小さい語順は3つ
小さい語順(部分の語順)は3つあります。それは、
①名詞チャンクの語順
②述語の語順
③前置詞→句、接続詞→節の語順
です。
以下、順番に説明していきます。
■小さな語順①名詞チャンクの語順
●名詞チャンクとは
名詞チャンクとは、名詞を核とした意味のまとまりのことです。
このブログでは、この定義で名詞チャンクという言葉を用います。
チャンクとは、意味のまとまりのことです。
例えば、
a new red book that I bought yesterday
では、book が核になっている名詞。
a new red が前置修飾の部分。
that I bought yesterday が後置修飾の部分です。
核である名詞の前に形容詞が並び、後に句や節(形容詞句、形容詞節)が並びます。
……【形容詞③】【形容詞②】【形容詞①】【名詞】【形容詞句・節】
●名詞の前置修飾
前置修飾の部分に形容詞が複数あるときは、
名詞に近い方がより具体的・現実的、客観的なもので、
前の方に行くにつれて抽象的・観念的・主観的なものになります。
前項の例でいくと、a,new,red のうち red が最も客観的です。
色は境目あたりでは微妙な場合もありますが、比較的客観的に判断できます。
次が new です。
新しいか古いかは主観的な部分が色の判断よりは大きいですね。
一番抽象的・観念的なのが a です。
形容詞のなかで最も抽象的な部類に入るのが、「限定詞(determiner)」と呼ばれるもので。
冠詞(a,the)や人称代名詞の所有格(my,your等)などがこれにあたります。
以上のような、名詞に近い方が具体的・客観的で遠い方が抽象的・主観的であるという順序は、
日本語の場合も同じです。
「新しい赤い本」と「赤い新しい本」では特別な事情がない限り、
「新しい赤い本」の方が自然と感じるのではないでしょうか。
「赤い新しい本」と言う場合は、新しい本が何冊かあって、そのうちの赤いヤツという文脈の場合などになるでしょう。
●名詞の後置修飾
日本語の場合は、句や節で修飾する場合も前置修飾になりますが、
英語の場合は後置修飾になります。
前置修飾が、名詞自体の性質等を述べるのに対して、
後置修飾は、背景的事情などを説明する感じになります。
●名詞チャンクの語順をどのように身につけていくか。
名詞チャンクの語順については、ネイティブのこどもが身につけていくであろう順序で進めていくのがいいと考えます。
具体的なものから抽象的なものへ、という順序ですね。
そこで、前置修飾については、
book
↓
red book
↓
new red book
↓
a new red book
といったように順番に前に語数を増やしていって、イメージが具体化、精緻化していくの感じ取るのがいいと思います。
後置修飾についても
book
↓
book that I bought yesterday
というように、句・節をつけていないときとつけたときを感じ分けるようにして身につけるのがよいと思います。
ただ、この例では、後置修飾部分が長いので、
time
↓
time to study
のような短いものからはじめるとよいでしょう。
■小さな語順②述語の語順
●述語とは
普通英文法では動詞か述語動詞という言葉を使いますが、
述語部分の核となるのは、動詞だけでなく、名詞や形容詞の場合もあるので、述語という言葉を使っています。
どういうことかと言いますと、
【だれが】【どうした】の【どうした】の部分は
どうした(動作)の場合もあれば、どうだ(状態)の場合もあります。
そして、be動詞で状態を表す場合、その状態のイメージの核は、be動詞に続く名詞や形容詞の方にあります。
例えば、
He is a teacher.
She is beautiful.
では、主語の状態を表しているのは a teacherと beautifulでしょう。
be動詞には具体的イメージがありません。
そのため、この場合は述語の核部分を名詞や形容詞であるとして、メイン名詞、メイン形容詞と呼ぶことにします。
●述語の語順のルール
述語の語順は
メイン動詞・名詞・形容詞を核として、前の方に向かって、
「能動・受動」、「単純・完了・進行・完了進行」、「法助動詞」の順番に並びます。
能動・受動は【態(ヴォイス)】、単純・完了・進行・完了進行は【相(アスペクト)】と呼ばれます。
【法助動詞(will,can etc.)】【完了の助動詞(have)】【進行の助動詞(be)】【受身の助動詞(be)】【メイン動詞】
と並ぶことになります。
全部乗せの例として、
might have been being eaten
この場合も、前置修飾の名詞の場合と同じように、
eaten
↓
being eaten
↓
been being eaten
↓
have been being eaten
↓
might have been being eaten
という風に、語数を増やしながらイメージを拡げていって語順を身につけていくのがよいでしょう。
ただ、やはり最初は述語の語数があまり多くのないものからはじめるのがいいです。
go
↓
will go
とか
arrived
↓
have arrived
などからはじめ、楽に感じ分けることができることができるようになってから語数を増やしていきましょう。
●語順の並び方の法則性
この述語の語順もメイン動詞に近いほうから順番に前方向へ、
具体的・客観的なものから抽象的・主観的なものへ段階的に並んでいます。
一番イメージ的にわかりやすいのが能動と受動の区別です。
動詞の力の方向が逆向きになっているのが他の要素よりも理解しやすいと思います。
進行形と完了形も、進行形の方がイメージ的にわかりやすいでしょう。
そして、一番主観的・抽象的なのが法助動詞です。
法助動詞は話し手の主観をあらわすものなので、これが一番先頭にきます。
このようにメイン動詞・名詞・形容詞を核として前へ前へとより主観的・抽象的な語が積み重なっていくというのは、
日本語の述語の場合と全く逆になっています。
日本語はメイン動詞・名詞・形容詞から後の方に向かって段々と主観的・抽象的な助動詞・助詞がつながっていきます。
説明が文法用語が多くていまいちスッキリわからなかったかもしれませんが、
日本語とは逆方向に段々と抽象的・主観的になっていくことを押さえていただければと思います。
●ネイティブの子どもが述語の語順を身につける順序
ネイティブの子どもは受動態よりも進行形の方を先に身につける場合が多いようです。
これは、進行形に触れる頻度の方が多いからではないかと思います。
わかりやすさという点では、受動態の方がわかりやすいのではないでしょうか。
■小さな語順③前置詞→句、接続詞→節の語順
この語順については、並び方については難しいことはないですね。
前置詞が名詞句の前にくるという語順は、文節の後に助詞がくる日本語とは逆になっています。
これは、日本語の助詞が、文節の後に来るもの(主に述語)との関係を示しているのに対して、
前置詞が、句の前にある語との関係を示しているからです。
つまり、AとBの関係を示しているとき、その間に置かれるのが自然だからです。
そして、この場合、句の前に前置詞があるというよりは、前置詞の後に句があるという感覚で捉えるのがよいのではないかと思います。
イメージを置く場所を前置詞で指定してからその場所にイメージを描く、というように処理していくのです。
英語が、主語を起点として、イメージを並べていって一枚の絵を完成させることによって理解する言語であることにも合致しているのではないかと思います。
■4つの語順まとめ
以上、4つの語順について説明してきました。
言葉で説明すると、いろいろ文法用語も入ったりして、わかりづらいところも多々あったかもしれないと思いますが、
実際のところ、非常にシンプルです。
まずは、大きい語順にしたがってイメージを並べていくという流れがあります。
そして、その大きい語順の中のイメージ(名詞や動詞)を膨らませるときに小さい語順に従って言葉を並べていく、というだけのことです。
例文
My father has been eating an apple in the morning since 2000.
この場合、大きい語順は
father→ eating→ apple →morning→ 2000
と並んでいます。
そして、
father → my father
eating → been eating → has been eating
apple → an apple
morning → the morning
とイメージが膨らまされています。
そして、
the morning と 2000 については、
has been eating との関係を示すために、
in the morning , since 2000
と前置詞がついているのです。
このように、英文を読んだり、聴いたりするときは、
大きい語順を追いかけながら、同時並行でそのイメージを小さい語順に従って膨らませたり調整したりしているわけです。
前にも書きましたように、意識(顕在意識)は、このような並列処理はとても苦手です。
並列処理をするためには、無意識の力を借りなくてはいけません。
作業を無意識化するためには、まずは、簡単な作業からはじめて、その簡単な作業を反復練習して楽にできるようになったら、少しだけ作業を難しくしてまた反復練習する、を繰り返すことが必要です。
具体的には、
まずは、大きい語順だけをなぞってみる。
それも、最初は、主語→述語とか述語→述語の対象とかの2語レベルからはじめて、徐々に語数を増やしていく。
また、小さい語順については、名詞チャンクの語順だけを練習してみる。まずは前置修飾だけ、それも最初はプラス1語の前置修飾からプラス2語、3語と増やしていく、次に後置修飾だけ、こちらについても語数の少ないものから徐々に多いものへ。
慣れてくれば前置後置合わせてやってみる。
述語の語順についても1語から2語、3語と増やしていく、といったふうに一度にたくさんのことを身につけようとせず、少しずつできる範囲を拡げていってみて下さい。
■無意識化が必要なもうひとつのこと
以前に、ネイティブのように話すためには、
語順と機能語の処理の無意識化が必要
だと書きました。
語順の無意識化の話は一通り終わりましたので、
次回は、機能語の処理の無意識化の話を書いていきたいと思います。